おでんねこおでんねこ

ボーカルスクールってどんな人が行くんだろう。気になっているけど、ハードルが高そうだなぁ・・・。

エレちゃんエレちゃん

お歌の教室、最近増えてきたわよね! 私もちょうど気になっていたの♪

なぜ「ウケている」?そもそもボーカルスクールとは

最近、ボーカルスクールに入校している方々が多くいらっしゃいます。しかも、それは若者に限らず、ご高齢の方々もだそうです。「ボーカルスクール」と聞くと、なんとなく、プロの歌手を目指すキラキラした人たちが、スタジオの中でマイクに向かって歌っているのを想像してしまいますが、「老若男女」に「ウケている」となると、そのイメージとはちょっと違いそうです。なぜそんなに「ウケている」のでしょう? いやそもそも、ボーカルスクールって何なんでしょう???

ボーカルスクールというのは、歌の上達を目指す人が先生の指導のもと歌の練習をする教室です。目指すレベルは、スクールによって様々。やさしいものでは、音痴を克服し、カラオケを楽しめるようにすることを目指すなど、初心者を対象にしています。もっとガツガツしたものだと、すでに歌に自信がある人が、プロとして活動し、メジャーデビューすることを夢見て通い、スクール自体もそれを全力でサポートする体制が整っています。
元々イメージしてたのは後者かもしれませんが、最近ではボーカルスクールの間口が広がり初心者の方も気軽に通えるようになっています。初心者からプロを目指す者まで、皆ボーカルスクールに通えるとなると、ハードルはあまり高くなさそうです。

>>ミュウ|カラオケ上達、音痴改善

プロから教えてもらえる!となると、気になるのはレッスン料。マンツーマンレッスンだとものすごい金額を要求されるんじゃないか、なんて心配になってしまいます。でも実は、ボーカルスクールのお月謝の相場は、1万円から2万円ほど。習い事ってだいたいそんな金額ですよね。
しかも、大手のボーカルスクールだと、予約の前日キャンセルができたり、相性の悪い先生をチェンジしたりと、いろいろ融通が利くんです。あまり構えずに、楽しんで通えそう。

でも、敷居が低くなったというだけでは流行りません。一体何が流行の原因になったのでしょうか。まずは年齢層別にみてみましょう。

若者が憧れる歌い手に誰でもなれる

さきほど、ボーカルスクールに通う人は歌の上達を目指している、ということに触れました。つまり、歌が上手くなりたい人が増えれば、ボーカルスクールは流行るのです。実際に今、歌が上手くなりたいという若者が増えているようです。

カラオケといえば、若者のイメージ。実際に、年代別にカラオケ参加率を比較すると、10代が一番高くなっているということが調査の結果わかっています。その若者の間で需要が増えれば、日本全体でみてもググっと需要が増えるわけです。ではなぜ、歌が上手くなりたいという若者が増えているのでしょうか。そこには、ニコニコ動画にあげられた「歌ってみたシリーズ」から始まった”歌い手”の存在があります。

歌い手は、元々プロの歌手ではありません。自分で作曲・作詞をするというよりは、既存の曲を自分の声でカバーし、ニコニコ動画を中心とした動画投稿サイトにそれを載せ、披露している人たちのことを言います。その声が魅力的だったり、技術が優れていたり、あるいはルックスが良かったりすると、再生数が伸び、人気者になれます。有名な方では、「まふまふ」さんや「そらる」さん、「96猫」さんという方がいるので、気になった方は検索してみてください。そういったズバ抜けて人気の方々は、CDを発売したり、東京ドームや武道館でのライブをしたりと、目覚ましい活躍をしています。

そんな歌い手は、中高生を中心としたファンの間ではカリスマ的な存在です。歌声を聴き心動かされ、ファンになった子たちの中には、自らも歌の動画を投稿し、小さな歌い手としてデビューする者もいます。現在の若者はネット世代。「動画を視聴できる」ということは、「動画を投稿できる」ということとほとんどイコールです。つまり、「歌い手になりたい!」と思いさえすれば、誰でも簡単に歌い手になることができるのです。
しかし、やはりその中でも人気者になるのは簡単ではありません。より多くの人に再生してもらうためには、なにより「歌が上手」であることが必要です。そこで、若者の間で歌の上達への関心が高まっているのです。

歌の上達を目指したとき、一番簡単な特訓方法は、カラオケボックスに通い詰めることです。友達と一緒に行き、友達と自分を比較してみたり、友達からコメントをもらったりすることは、意欲を燃やす糧になります。友達といると気が緩んでしまうのであれば、ひとりカラオケでひたすら鍛えるというのもアリです。しかし、「正しい歌い方」などの専門知識がないと、喉を酷使する歌い方をして傷めてしまいます。また、素人がひとりで練習するのにはどうしても限界があります。そこで、大きな助けになるのがボーカルスクールなのです。

ボーカルスクールでは、プロの指導のもと、「どうやったらもっと上手に歌えるようになるか」という悩みについての的確な答えを得ることができます。最近ではマンツーマンレッスンの敷居も低くなっていますが、講師と一対一のレッスンを受ければ、完全に自分のためだけのカリキュラムを組んでもらえ、自分のペースで上達を目指すこともできます。スクールによっては、動画投稿サイトで活動する「ネットアーティスト」に特化したコースを用意しているところもあるので、歌だけでない、「人気の歌い手になるための技術」も教えてもらえるかもしれません。

習い事をたくさんやっている現代の若者にとって、ボーカルスクールも習い事のひとつになります。歌い手に憧れ、ボーカルスクールに通う。それが、今のボーカルスクールブームの要因の一つだと考えられます。

カラオケに集まる老人の方々。その理由とは?

若者についてはわかりましたが、ご高齢の方についてはまだまだわかりません。そこで、ここからは「なぜボーカルスクールがご高齢の方にもウケているのか」ということについて、考えていきたいと思います。

ご高齢の方は普段、どういうところで過ごされているか、考えてみてください。スーパーでしょうか、喫茶店でしょうか。それとも本屋でしょうか。香川県が何年か前に行った「高齢者居場所実態調査」によると、ご高齢の方が普段行く場所の割合は

  • デパートなどの大型商業施設・・・16.9%
  • スーパー・・・21.9%
  • 本屋や電器屋、喫茶店などの小売業系・・・30.8%
  • パチンコやカラオケ、ゴルフなどの娯楽施設・・・30.3%

になっているそうです。ここからわかるのは、ご高齢の方にとっての娯楽施設の重要性です。そんな娯楽施設のひとつとして、カラオケも大切な居場所になっています。
別の調査で、神戸市在住の65歳の男女5000人を対象に、普段どのように音楽に触れているかを訊いたものでは、なんと「音楽界や演奏会に行く(18%)」や「ジャズやポップスを聴く(18%)」を抜いて、カラオケで歌う」が22%を占めており、一番多くなっています。

なぜ、ご高齢の方にこれほどカラオケが人気なのでしょうか。一つの理由として、「歌を歌うことが健康のためになる」と考えられている、ということが挙げられます。「音楽療法」ということばがあるように、音楽は、ココロにもカラダにもいいものだ、というイメージがあります。実際に、歌で感情を表現することはストレスの発散になりますし、うつ状態の回復効果、記憶力を鍛える効果も期待できます。また、歌いながら身体を動かせば、四肢の機能低下を防ぐことができ、リズムに乗せてはっきりと言葉を発声することは、言葉をスムーズに出すのにも有効です。
しかし、それよりも大きな理由に、「歌うことが生きがいになっている」というのがあります。友達と一緒にカラオケに行くことは、人とのつながりを実感する大切な時間です。歌を通じたコミュニケーションとして、カラオケは重要な意味を持っています。

カラオケ人気に加え、ボーカルスクールに通う方も多いというのには、この生きがいが大きく関係していると考えられます。そのことは、5年ほど前に秋田大学が高齢者向けに行った公開講座、「発声法と歌唱法」のアンケートの中に綴られた様々な思いからよくわかります。
歌の上達の喜びに関しては、次のようなコメントがありました。

老人女性・マイク

発声に不安だったが楽しいです。表現力をもっと養いたいと感じました。自分と歌の絆をもっと深めたいです。


老人男性・マイク

指導をしていただくと,表現がより良くなり,普段は出ない音域の声まで出せるようになる。皆で歌うと幸福感につつまれます。


また、プロの視点が入り、今までとは異なった歌い方をするようになったことについては、

老人男性・バンザイ

感動しました。小さい頃から知っている唱歌ですが,歌詞によっての表現を初めて知りました。本当に何も知らなかったので,とても勉強になりました。


老人女性・バンザイ

歌詞やメロディーの全体の流れ,イメージを大事に歌うことを楽しませて学びました。体の中でひびかせる。のどをあける家庭で歌う時も録音を繰り返し聞いたら何か身につくかしら,楽しみです。

というコメントが出ています。他にも・・・
最初,家族からはからかわれたが今では喜んで一緒に声を出して練習している。
先回,ソロで歌ってみました。緊張しましたが終了後帰える途中共に講座を受けていた方に『涙が出てきました。感動して聞きました』と声をかけられ,自分の思いが相手に伝わり嬉しく思いました
というような、歌をきっかけにした他の人との関わりを喜ぶ声もあがっています。
この喜びは、ボーカルスクールでの練習や発表会での発表で味わえるものと同じでしょう。こういったコメントを読むと、なぜボーカルスクールに通いたいと思うのか、想像できますね。

歌を上達したい人が増えた!インターネットの発達がボーカルスクールを「ウケ」させた

年齢層にかかわらず、ボーカルスクールが流行した最大の理由は、なんといってもインターネットの発達です。
さきほどの歌い手の話とも重なりますが、それまでは一握りの人にしか歌えなかったステージが、ネット上に拡大し、手軽に、お金もほとんどかからず歌えるようになったのです。もっと歌を上達させて、たくさんの人に聴いてもらおう」という意欲に火がつき、ボーカルスクールに通う人が増えたと考えられます。

歌手になって多くの人に歌を聴いてもらうにはオーディションを受けまくるしかなかった時代から、動画を簡単に投稿するだけで、全世界に伝えることができる時代になりました。大人気とまではいかなくても、投稿した動画に「綺麗な声ですね」「感動しました!」「もっと色々な歌が聞きたいです」なんてコメントが付いたら、嬉しいに決まっています。その嬉しさが、さらなる上達のモチベーションになることでしょう。

”歌”で生計を立てる億万長者たち

そんなインターネットの発達は、歌を仕事にして儲ける億万長者を生み出しています。動画投稿サービスは、ニコニコ動画だけでなく、YouTubeやイチナナ、インスタグラムなどいろいろあります。最近は、YouTubeに動画を投稿し、その収入だけで生活するYouTuberが話題ですね。多くのテレビにとりあげられていますが、登録者数の多い大人気Youtuberになれば、本当に「億」という金額も夢ではないようです。

また、人気者になれば、活動をYouTube上だけにとどめる必要はありません。レコード会社から声がかかり、メジャーデビューをしたという歌手も少なくありません。レコード会社などに所属するのが窮屈だと感じるようであれば、フリーでCDやグッズを売ったり、ライブを開いたりして収入を得ることも可能です。

「もしかしたら億万長者になれるかもしれない」という期待をより簡単に抱けるようになったことも、ボーカルスクール流行の一因かもしれません。一獲千金を目指すのも良し。お金に換えられない喜びを得ようとするのも良し。目的にかかわらず、老若男女にかかわらず、歌の上達を目指す人がたくさんいるということが、ボーカルスクールが「ウケている」理由になっています。

「しっかりとプロに教わって上達したい!」と思ったら、ボーカルスクールを覗いてみてはいかがでしょうか。思いもよらぬ可能性が広がるかもしれませんよ……?


 

参考文献

「高齢者の歌唱学習とその効果について」(秋田大学)

「音楽と高齢者――音楽老年学の構想」(神戸大学)